【番外編更新中】騙し愛され落とし合い ~借金帳消しのために、××の家でお嫁さん候補としての生活を始めます~



「……はひひてふのはな?」

「それはこっちのセリフですよ!」


由紀さんの頬っぺたを、両手でぎゅっとつぶしてやった。

タコみたいな顔になった尊さんは、きょとんと目を瞬かせたかと思えば、私の両手をはがしてニッコリと笑みを浮かべる。


「千夏子ちゃん、ムードって言葉は知ってる? こういう場面では目を閉じるのがセオリーじゃないかな」

「あ、あいにく、そういうムードとは縁のない人生を送ってきたものでして!」


――私の勘違いじゃなければ、尊さん、今キスしようとしてたよね? 


でも彼氏でもない人と流されてキスするなんて、私は絶対に嫌だ。 

っていうか尊さんは、何でキスしようとしてきたんだろう? ……揶揄われてただけなのかな?