「べ、別に怖いわけじゃねーけど……こういうのは、好きじゃないってだけだ。でも、俺がこう言ってたってことは、誰にも言うなよ。特にアイツらには絶対にな!」
一哉くんの言う“アイツら”とは、確実に桐野江家男子たちのことだろう。
一哉くんが怖がりであることを知って、揶揄ってくる由紀さんのニヤニヤした顔が容易に想像できてしまう。
「ふふ、わかった。誰にも言わないよ」
一哉くんと話しながら歩いていたら、怖いって気持ちも少しずつ薄れてきた。
自分より緊張している人や怖がっている人を見ると、逆に落ち着きを取り戻せる、なんて話をどこかで聞いたことがあるけど、本当なのかもしれない。
その後は何人かの脅かし役の生徒に驚かされながらも、何とか折り返し地点に置いてあるボックスまでたどりつくことができた。
一哉くんは驚かされるたびにビクッと反応しながらも、必死にポーカーフェイスを保とうとしているのが分かって微笑ましかった。
こんなこと言ったら怒られちゃいそうだから、一哉くんには言わないけどね。



