「もう、慎くんってば。一人で食べるのが嫌なら……あ、ほら! あそこに一哉くんがいるよ? 一緒に食べればいいんじゃない?」

「やだ。俺は千夏子と食べたい」


慎くんは一哉くんからぷいっと顔をそむけて、私の手を握ってくる。


――こ、この我儘ボーイめ。


「……はぁ、わかったよ」


慎くんは一度こうと決めたら引いてくれなさそうだし、ここは私が諦めるしかなさそうだ。

大人しく隣の席に深く腰掛ければ、慎くんは手を離してくれた。


朱里ちゃんの方に目を向けて謝るポーズをすれば、(大丈夫だよ)と口パクで言いながら笑顔を見せてくれた。

……朱里ちゃん、本当に優しい。できることなら一緒に食べたかったな。