「俺は今の千夏子、結構好きだけど」

「……えっと、ありがとう?」


“好き”って言われてほんの少しだけドキッとしちゃったけど、多分、慎くんに他意はないはずだ。

特に何も考えないで好きって言ってくれている気がする。


「まぁ慎の言う通り、千夏子ちゃんは今のままが一番面白いよなぁ」

「そうだね」

「俺もありのままの千夏子さんが魅力的だと思ってますよ」

「あー、玲の外面にも、すっかり慣れてきたよなぁ、って、いってぇ!」


由紀さんと尊さんは言葉通り、ただ面白がっているだけだと思う。

玲くんは素直に嬉しいなって思える言葉を伝えてくれた。

その直後、隣にいた由紀さんがボソリと何かつぶやいたかと思えば、急に痛みを訴えだしたけど……どうしたんだろう。



――でも、今日皆から話を聞くことができてよかったかもしれない。

これからは皆の好みを演じようとか、変にごちゃごちゃ考えないで、ありのままの自分で向き合っていこう。

そして、誰かのお眼鏡にかなって正式なお嫁さんになれた、その時には――約束通り、借金を帳消しにしてもらうんだから!


「……って、皆さん、そろそろご飯食べちゃいましょう! 学校に遅刻します!」


話に夢中になっていて、気づけばかなりの時間が経っていた。

皆で「いただきます」をして朝食を食べて、玄関前に待機していた部下の黒服さん達に「いってきます」と声を掛けて、学校へ向かった。