「……そうですよ。掴みが肝心って言われたので、どうせなら皆さんの好みの女性になりきってやろうと思って」

「いや、いくら我儘な女が好みだとしても、初対面で東京ドーム規模の家が欲しいって言ってくる女は、ただ頭がいかれてるだけだろ」

「そ、そうなんですか……?」

「千夏子ちゃんって、ちょっと抜けてるところがあるよね」


多少は上手くやれていたと思っていたのに、まさか全然通じていなかったなんて……。


衝撃の事実に固まってしまう。

一哉くんなんかは呆れた顔をしているし、尊さんや由紀さんは笑っているけど。


――だけど、その時。


「千夏子はさ、そのままでいいんじゃない?」


そう言ってくれたのは、眠たそうにウトウトしていた慎くんだった。

全然話さないから座ったまま寝ているのかと思ったけど、ちゃんと話は聞いていたみたい。