「まさかお前……下りられなくなったとか言わねぇよな」 「そ、そんなまさか! 自分で登っておいて、下りられなくなったなんてこと、あるわけ……!」 「……」 「……その、思ったよりも高くて、ちょっとだけ怖くなってきちゃいまして」 「はぁ、仕方ねぇな」 無言の視線に耐えかねて正直に話せば、一哉くんにため息を吐かれてしまった。 「あ、でも大丈夫! 覚悟を決めたらちゃんと下りるから……って、一哉くん、どうしたの?」 一哉くんは、何故か両腕を広げた状態で私を見上げている。