「あら、一哉くんのお友達だったのね。それならぜひ、ゆっくりしていってちょうだい」
女性は私が一哉くんの知り合いだと分かると、優しい顔で笑いながらそう言って、先に中に入っていった。
「あの、一哉くん。これはその……」
「お前……もしかして、俺の後をつけてきたのか?」
「……はい。ごめんなさい」
正直に謝って、訳を話した。
一哉くんの様子がおかしいことが気になって、後をつけてきてしまったことを。
一哉くんが落としていった紙を手渡せば、一哉くんは落としていたことに気づいていなかったらしく「サンキュ。拾ってくれたのがお前で良かったわ」と言ってくれた。
「これは、この施設で暮らしてる子が描いてくれたんだよ」
「やっぱりそうなんだね」
「あぁ。この施設は、俺が育った場所なんだ」
一哉くんは、優しい目をして施設を見上げている。
――そっか。ここは、一哉くんが育った場所だったんだ。



