「あ、一哉くん! 何か落とし…「お、俺、出かけてくるから!」
声を掛ければ、ビクーッと大きく肩を跳ね上げた一哉くんは、こちらに見向きもせずに玄関に向かって行ってしまった。
ガラガラピシャンッ! と玄関扉の閉まった音がする。
「……行っちゃった」
一哉くんが立っていた場所まで行き、紙きれを拾い上げる。
四つ折りにされたそれを開いてみれば、そこには、赤髪の男の子と花の絵が描いてあった。
小さな子どもが描いたような絵だ。
この赤髪の男の子は、一哉くんかな?
「何だろう、これ」
分からないけど……でもきっと、一哉くんにとっての大切なものに違いない。
そう思った私は、一哉くんの後を追いかけることにした。
こっそり尾行するような真似をしてしまって、申し訳ないなって気持ちもあるけど、さっきの挙動不審な様子も気になるし。



