「最後は慎か。おい、慎。こんなところで寝るんじゃねぇ!」
組長さんに呼ばれて目をこすっているのは、黒髪の男の子。
よく見ればその瞳は、綺麗なアメジストの色をしている。
「……桐野江慎。メンドクサイことは嫌いだから、よろしくー」
それだけ言うと、興味なさげに机に突っ伏してしまった。
「全く、コイツは……。ワリィな、千夏子さん」
「い、いえ」
「慎は正真正銘、オレの孫でな。本来ならコイツが桐野江組を継ぐはずだったんだが、本人が「面倒くさいから絶対ヤダ」とごね続けやがるもんで、元より桐野江家に迎え入れていたコイツらを含めて、跡取り候補にしたんだ。ちなみに、歳は千夏子さんと同じだ。仲良くしてやってくれ」
組長さんが説明してくれる。
言われてみれば確かに、組長さんと慎さんの目元とか、少し似ている気がする。



