暇潰しのゲームで勝つために、いつも通りの猫をかぶって近づいただけだ。
落としたら終わり。
それだけのはずだったのに……ほんの一瞬でも可笑しな考えを抱いてしまった自分に、違和感を覚えた。
――千夏子の泣き顔は見たくない、だなんて。
(別に、アイツが泣こうがわめこうが、俺には関係ない。アイツを落として、ゲームに勝つ。そしたら正体をばらして捨てればいい。いつものお遊びだろ)
玲はそう自分に言い聞かせながら、目元を腕で覆い隠した。
そして考えることを放棄するかのように、暗闇の世界に沈んでいった。
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