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家に帰った玲は、自室に戻ると、そのままベッドに倒れ込んだ。
仰向けに寝転びながら、前髪をぐしゃりと掻き上げる。
目を閉じても瞼の裏に浮かぶのは、へにゃりと眉を下げて笑う千夏子の顔だった。
「……クソッ。何なんだよ、あのバカ女」
別に家のことについて何を言われようと、玲は一切気にしていなかった。
有象無象のクズどもがいくらほざいていたって、どうでもいい。
……まぁ、あの場に千夏子がいなければ、確実に手を出していただろうが。
けれど千夏子は、玲本人でさえも諦めていることに、全力で怒っていた。心を痛めているようだった。
それが玲からしてみたら、心底不思議で……心臓のあたりがむず痒くなるような、妙な感じがしたのだ。



