「……千夏子さんは、やっぱり変わってますね」
玲くんは、ふっと息を漏らすように笑う。
いつもの愛らしい笑みとは少し違う、優しさの中に呆れた感情が混ざり合ったような笑顔。
桐野江家の男子たちに向ける、気を許した人にだけ見せる表情に、ほんの少しだけ似ているような気もする。
「それじゃあこれから、俺のことをもっと知ってください。千夏子さんに相応しい男かどうかも、ね?」
腰を折った玲くんが、顔を覗き込んでくる。
陽の光を反射した柔らかな金の髪が、風にのって揺れている。
いつもよりずっと近い距離に、はじめて見る意地悪な笑みに――少しだけドキッとしてしまったのは、玲くんには秘密だ。



