「千夏子さん」
男の子たちの姿が完全に見えなくなったところで、玲くんに名前を呼ばれた。
足を止めて振り返れば、玲くんは眉を下げて笑っている。
「……嫌な思いをさせてしまって、すみませんでした」
「な、何で玲くんが謝るの? 玲くんは何も悪いことしてないでしょ?」
「いえ、俺と一緒にいたせいで、千夏子さんを巻き込んで不快な気持ちにさせてしまったのは事実ですから。でも……別に、あんなの流せば済む話だったんですよ。それに、今回は俺が一緒にいましたけど、逆上して手を出してくる可能性だってあるんですから。危ない真似はしないでくださいね」
「……やだ。だって玲くんのこと何も知らないくせに、勝手なことばっかり言われてムカついたから。……まぁでも、私も玲くんと出会って数週間しか経ってないし、まだまだ知らないことだらけだけどね」



