その息尽きるまで時間は無限

びっくりした。

七晴に本を取られたのだ。

なんと身勝手なのだろうか。

「ねーねー、君はなんてゆーの?文字だらけの本読めんのすごーい!」

呑気な声で言う七晴。

流石に無視するわけにはいかない。

「…私は、濡沢衣。」

最低限答える。

「衣ちゃんってゆーんだ!かわいー!よろしくね!衣ちゃん!クロはね、黎って呼んでねっ!」


勝手に手を握られ、上下にブオンブオンとふられる。


七晴は、幼稚的な、明るいくったくのない笑顔を見せた。

だが、その笑顔には悪魔の高笑いも感じ取れた。