その息尽きるまで時間は無限

休み時間になった。

転校生が来た時の恒例イベント、クラスメイトの群がり。

「ねえねえどっから来たの?」

「さっきいた人誰?」

「その髪ゴムかわいい!どこで買ったの?」

特に七晴の場合、謎のSP(仮)がついていた。

もっと注目の的だ。


私は座って本を読んでいた。

第一、興味がない。

イジメっ子たちは…七晴を見て…いや、監視していた。

なぜなら、転校初日からSP(仮)がついていたから、“立場が上”の可能性がある。

いや、明らかに上の雰囲気。

佳凪は親指の爪を咥えて餌を狙うタカのような目をしている。




七晴の周りがキャッキャと騒がしい中、4人と私は一触即発の、わさびのようにピリピリした空気が漂っていた。

そんな中、わさびから唐辛子レベルの痛みに変える、七晴の爆弾発言が教室に響いた。


「さっきの青野さんはね〜クロのゴエーさんなの!パパがクロのこと心配してくれるんだ〜♪あ、そうだそうだ、クロのパパって国会議員さんなの!ママは〇〇会社の社長さんなんだっ!
あ、この前ハワイに行った時に買ってもらったマカダミアチョコがあるんだけど、パパがいっぱい買って食べきれないし、みんなにあげるよー!!!!」



全てが爆弾。

佳凪が爪を噛みちぎった。






本当にあの青野さんはSPだった。

そして、なんと国会議員と超大手会社の社長を親に持っている。



琴木家とは比べ物にならないほど。




そして、ハワイに小学生で行っただと…?

マカダミアチョコをクラスメイト30人分?

一般人には理解できなくて、頭がクラクラする。



クラスは大騒ぎ。

そんな中、静かに、七晴が立ち上がった。

足音が、私に近づく。

後ろから、読んでいる本をとられた。

「えっ?」

「すごーい、これなんて本?わっ表紙のこの子かわいー」