次の日。
ピーンポーンパーンポーン。
おそらくこれが最後のゲーム…
もう祈れない。
愛菜と私が選ばれることは確定だから。

第9ゲーム
救出人:世田谷のぞみ
高木愛菜

言われるままに愛菜はガラス張りの部屋へいく。
『それではよーい、スタート!』
「のぞみ、ちょっと時間を頂戴」
いきなりなんだ…?
これまでの流れを見ると、あんまりいい感じにはならなそうだ。
「実はのぞみのこと…私…裏切ってたの」
「え?」
裏切ってた…?
「どういうこと?」
「のぞみと友達になったのは、のぞみと友達になりたいからじゃない」
「え?でも確か私たち、同じ本が好きで…」
「あの本ほんとは好きじゃない。のぞみがよく読んでいるのをみて、調査して、好きなふりをした。つまり…私はあなたの裏切り者ってこと」
裏切り者…
「おかしいよね?今ひどいって思ったよね?友情って、やっぱこういうのが切れ目だよね」
おかしいなんて…
1ミリも思ってない。
「違う」
「?」
「おかしいなんて、ひどいだなんて、1ミリも思ってない。わかるの。愛菜がこういうこと言いだすとき、何か必ず理由があった。今回も絶対にそう。愛菜を肯定するか否定するかは、理由を聞いてから決める」
愛菜にはただ、自分の本音をわかってほしいだけ。
「…優しいな…のぞみは」
「優しさじゃない」
優しさなんてないと思う。
誰も守れなかった。
梓も、美香も、かなたも…全員。
すると愛菜は話し始めた。
「私に姉がいるの、言ったっけ?」
姉…?
愛菜に姉なんているの?
「いや…知らないけど…」
「そっか。名前を玲奈って言うんだけど…」
高木玲奈(たかぎれいな)って…どっかで聞いたこと…
「お姉ちゃんは、優しくて、たくさんのことができる、私の自慢のお姉ちゃん。…でもある日…なぜか行方不明になった」
「!」
思い出した。
2年前、確か**県の中学校の特定のクラスで不審な行方不明事件があったって。
のちに6人生還したけど、その中の1人が、玲奈さんだ。
「確か、不審な行方不明事件ってテレビでもやってた」
「あれ、行方不明じゃない。殺されたの」
「え!?」
殺されたって…!?
「今このゲームを主催してる、あやめグループに」
「え!?…ってことは玲奈さんもこんな感じのデスゲームに巻き込まれたってこと!?」
愛菜は頷いた。
嘘でしょ…
「デスゲームの話はお姉ちゃんから聞いた。6人の生還者は、デスゲームの生き残りで、このゲームでたくさんのクラスメイトを殺されたって」
私たちと、おんなじだ…
「その時かもしれない。私があやめに恨みを持ったのは。お姉ちゃんの大事な人を平気でたくさん奪って、許せないって。…そしてのぞみのお父さんがあやめグループ直属の会社に勤務してるって聞いた時、運命を感じた」
確か…私のお父さんはあやめグループ直属の舞野(まいの)食品ってところに勤務してる。
「のぞみのお父さんに聞けば、お姉ちゃんの大事な人を死に追いやった真相を聞けるかもしれないって。この前のぞみのお父さんに会いたいって言ったのも、このため」
えっ!
あの時は私の友達としてあいさつでもしようとでも思ったって、勝手に思い込んでいたけど…
でもだとしたらお母さんでもいいな…
…まさか、愛菜が私と友達になった理由って…!
「じゃあ愛菜が私と友達になった理由って…私のお父さんに近づくため!?」
「うん。いえなくてごめん」
なるほど…
「最初はお父さんの事を聞いたら、適当に別れようって思ってた。捨て駒だった。でも、のぞみの純粋で素直ない優しさをどんどん感じて…辛くなっていった。罪悪感あるなって。この子は私を本当に友達だと思っているのに、自分は何をしてるんだって」
聞くだけでも辛さがわかる。
「ほんとバカみたいだよね。私」
…そういえば…ボタンは?
「そういえば愛菜、ボタンは?」
「押さなくていい」
「え!?」
「こんな優しいのぞみを裏切った私に、生きる価値はないから」
そんなはずない。
確かに愛菜は私のことを思ってなかったかもしれない。
でも私の感じた愛菜との友情は、間違いない。本物だ。変えられることのない。
向こうが消えてしまったら、友情が消えてしまう…
だから…
「私も一緒にいくよ」
「え!?のぞみはいいよ!」
「愛菜との友情は絶対に本物。愛菜が消えたら、友情は無くなってしまうでしょ?私の友達…いや、親友は、愛菜しかいない」
愛菜の目からキラキラとした何かが流れた。
水…?
いや、これは…
「あり…がとう…あははっ」
「もう!泣くほど?」
「違う!これは涙じゃない!H2Oだよ!」
「H2Oは水じゃん」
こうなったら…私はもう迷わない。
校舎に向かう。
覚悟は決まった。
私たちを死なせてください。
…なんて、ちょっとおかしいかもしれないけど。
青いボタンを押した。

死亡者:世田谷のぞみ、高木愛菜(元1年1組)

「ありがとう。のぞみ」
「私もだよ。愛菜。」
「天国に行くか地獄に行くかわからないけど、いつかまた合おう!」
「もちろん」
目を閉じた。
もういい。
目の前が真っ暗になる。
さよならはいえた。
…ちょっと寂しいなあ…
そういや、愛菜にサプライズしようと思ったけど、バレてたなあ。
一緒にゲーセン行って音ゲーの勝負をしたけど、全く決着つかなかったなあ。
お泊まり会した時、枕投げをたくさんして、次の日私のベッドはとんでもないことになってたなあ。
「楽しかったなあ…」