Lord of My Heart 〜呪われ伯爵の白い(はずだった)結婚〜

 どこか遠くで、雷鳴が(とどろ)いていた……。

 ノースウッドを含む北部地方はその気候の気紛れぶりでよく知られていて、今、晴れていると思ったら、急に雨が降り出すのも珍しくない。
 オリヴィアたちの頭上はまだ青い空が広がっていた。
 ──しかしそれが、この先の晴天を約束するものではないのは、オリヴィアもよく分かっている。

 二人は言葉少なにハーブ狩りを再開したが、どうやら、エドモンドのハーブに対する情熱は、昼前にくらべるとだいぶ冷めてしまっているらしかった。
 今までと同一人物とは思えない放漫な動きで働きながら、ふと無言で天を見上げていたりする。

 少し離れた場所でハサミを操りながら、オリヴィアはそんなエドモンドをじっと見つめていた。

 彼はまるで、何かを祈っているようだわ……と、オリヴィアは思った。
 何かに救いを求めているようだ、とも。