しかし──手首をぎゅっと掴まれる感覚がしたのは、それからすぐだった。
「オリヴィア」
抑えた声がした。「顔を上げなさい、私はここだ」
オリヴィアはその通りにした。すると、真剣な表情をしたエドモンドが、オリヴィアの目の前に立っている。オリヴィアの顔をじっと覗きこみ、眉と眉の間に皺を寄せたエドモンドが。
「ノースウッド伯爵、わたし……わたし、置いていかれてしまったのだと……」
青い瞳を涙で濡らしたまま、途切れ途切れにオリヴィアは言った。
「そんなことはしないから、安心しなさい。私はあなたを見捨てたりしない。何があっても」
エドモンドの声には、どうしても彼を信じたくなってしまうような確かな響きがある……。
オリヴィアはぐずっと鼻をすすりながら頷いた。
「では、どちらにいらしたのですか? すっかり、あなたも一緒に休んでいらっしゃるのだと思っていたから、驚いたんです」
「眠れなかったので、辺りを歩いていただけだ……。ここを離れたわけではない」
「まあ」
オリヴィアはやっと顔を上げて、エドモンドをじっくりと見つめた。真剣な顔、くっきりとした男性的な眉、力強い緑の瞳。
エドモンドだ。
ただ、彼の髪と額に、見慣れない汚れがあった。特に額などは、すり切れたように赤くなっている。
オリヴィアは首を傾げた。
「どこか、とても荒れた場所を歩いてこられたのですか? 特に額が……まるで何度も木に頭をぶつけられたみたいですけど……」
エドモンドはしばらくむっつりと黙ったあと、「そうかもしれない」と言った。
真相は森だけが知っている──。
「オリヴィア」
抑えた声がした。「顔を上げなさい、私はここだ」
オリヴィアはその通りにした。すると、真剣な表情をしたエドモンドが、オリヴィアの目の前に立っている。オリヴィアの顔をじっと覗きこみ、眉と眉の間に皺を寄せたエドモンドが。
「ノースウッド伯爵、わたし……わたし、置いていかれてしまったのだと……」
青い瞳を涙で濡らしたまま、途切れ途切れにオリヴィアは言った。
「そんなことはしないから、安心しなさい。私はあなたを見捨てたりしない。何があっても」
エドモンドの声には、どうしても彼を信じたくなってしまうような確かな響きがある……。
オリヴィアはぐずっと鼻をすすりながら頷いた。
「では、どちらにいらしたのですか? すっかり、あなたも一緒に休んでいらっしゃるのだと思っていたから、驚いたんです」
「眠れなかったので、辺りを歩いていただけだ……。ここを離れたわけではない」
「まあ」
オリヴィアはやっと顔を上げて、エドモンドをじっくりと見つめた。真剣な顔、くっきりとした男性的な眉、力強い緑の瞳。
エドモンドだ。
ただ、彼の髪と額に、見慣れない汚れがあった。特に額などは、すり切れたように赤くなっている。
オリヴィアは首を傾げた。
「どこか、とても荒れた場所を歩いてこられたのですか? 特に額が……まるで何度も木に頭をぶつけられたみたいですけど……」
エドモンドはしばらくむっつりと黙ったあと、「そうかもしれない」と言った。
真相は森だけが知っている──。


