Lord of My Heart 〜呪われ伯爵の白い(はずだった)結婚〜

 たとえば、バレット家の呪いがなかったなら。
 たとえば、自分がもっと饒舌で、柔らかい愛の言葉をすらすらと紡ぎ出せる種類の男だったなら。そう、たとえば、ローナンのように。

 そんな、いくつかの空しい可能性を思い浮かべながら、エドモンドは目の前にいる妻を見つめた。

 オリヴィアの肌には疲れが見えて、もともとの色白さにさらに深みが増し、官能的な青白さを放っていて……これでもかとエドモンドの瞳を捕らえて離さなかった。
 おまけに今日の彼女のドレスは襟ぐりが半楕円形にひらいていて、肩から鎖骨、そして胸へと下るラインがくっきりと見える仕様になっている。

 ──なんの拷問だ。
 エドモンドは歯の隙間から漏れそうになる唸り声を抑えるのがやっとだった。

 オリヴィアは天使だ。
 彼にとって、オリヴィアは間違いなく天から遣わされた天使だった。

 ただでさえ彼女の笑顔はエドモンドの心を鷲づかみにしたが、エドモンドの言葉に対して浮かべたその満点の笑みは、彼の鉄壁の自制心さえ崩そうとしている。

 他の誰のものでもない、エドモンドの言葉に、オリヴィアは微笑んだのだ。