Lord of My Heart 〜呪われ伯爵の白い(はずだった)結婚〜

「お屋敷に戻るべきでしょうか、ノースウッド伯爵」
 できるだけ誠意を込めて、オリヴィアは謝った。
「昼食のバスケットを用意するのは初めてだったんです。許していただけますか」

 肩を落としているオリヴィアに、しかし、エドモンドの返事は意外なものだった。

「あなたが謝る必要はどこにもない。私は、いただこう」
 そう言って、まるで普通のサンドウィッチに噛り付くように、オリヴィアのサンドウィッチを頬張った。

「ま、まぁ……」
「あなたも、砂が気になるならチーズとパンだけにするといい。あとで果実を取ってこよう」
「そ、それは嬉しいです。でも、あの、無理なさらなくても……」
「マギーのスープよりずっと美味だ」

 かなり真剣な口調でエドモンドがそう言ったので、オリヴィアはつい、緊張を忘れて笑い出した。
 オリヴィアの明るい笑顔を見て、エドモンドは顔を崩す。
「まさか、わたしが本当に、あのレバーのなれ果てを好いていると思ったのか?」

 それは、エドモンドが初めてオリヴィアに見せる、笑顔、そして親しげな口調だった。

「ノースウッド伯爵……」
 オリヴィアは呟いた。

 そして気付く。私はこの男性(ひと)に惹かれている──。もう、どこにも逃げ道がないほどに。