エドモンドはしばらく棒立ちになっていた。
土で汚れた手をはたきもせず立ち尽くしたまま、しくしくと涙を流すオリヴィアを、離れて見つめていた。
泣いているオリヴィアはいつもより一回り小さく見えて、儚げで、エドモンドの胸の中を大きくかき乱した。
──この小娘は何もわかっていない。
まるで傷つけられたのは自分だけだというように泣いて、言いたいことだけを言って、エドモンドを責めている。
違う、違う、違う──。
エドモンドは、オリヴィアを傷付けたくないだけだ。何も言わないのではなく、言えないのだ。
オリヴィアは可愛い。
オリヴィアは美しくて純粋で、夫に尽くそうと一生懸命努力している姿は、強く彼をそそる。だから、いけないのだ。
バレット家の呪いに、彼女を傷付かせるわけにはいかない。
それなのに彼女は……。
「私は……あなたがぼうっとしているのは、具合が悪いからだろうと言いたかっただけだ。朝もほとんど食べていないだろう」
エドモンドは食いしばった歯の間から押し出すような低い声でそう言った。
オリヴィアはぴくりと肩を震わせ、涙を止めて瞳を大きく見開いた。
「え……?」
「この先にゆっくり休める場所がある。そこへ行こうかと言いたかっただけだ」
そして、エドモンドはオリヴィアに背を向けると、足元に転がっていたハーブの束を持ち上げて、馬に乗せていた布袋にそれらを乱暴に詰め込んで──そのまま動かなかった。
土で汚れた手をはたきもせず立ち尽くしたまま、しくしくと涙を流すオリヴィアを、離れて見つめていた。
泣いているオリヴィアはいつもより一回り小さく見えて、儚げで、エドモンドの胸の中を大きくかき乱した。
──この小娘は何もわかっていない。
まるで傷つけられたのは自分だけだというように泣いて、言いたいことだけを言って、エドモンドを責めている。
違う、違う、違う──。
エドモンドは、オリヴィアを傷付けたくないだけだ。何も言わないのではなく、言えないのだ。
オリヴィアは可愛い。
オリヴィアは美しくて純粋で、夫に尽くそうと一生懸命努力している姿は、強く彼をそそる。だから、いけないのだ。
バレット家の呪いに、彼女を傷付かせるわけにはいかない。
それなのに彼女は……。
「私は……あなたがぼうっとしているのは、具合が悪いからだろうと言いたかっただけだ。朝もほとんど食べていないだろう」
エドモンドは食いしばった歯の間から押し出すような低い声でそう言った。
オリヴィアはぴくりと肩を震わせ、涙を止めて瞳を大きく見開いた。
「え……?」
「この先にゆっくり休める場所がある。そこへ行こうかと言いたかっただけだ」
そして、エドモンドはオリヴィアに背を向けると、足元に転がっていたハーブの束を持ち上げて、馬に乗せていた布袋にそれらを乱暴に詰め込んで──そのまま動かなかった。


