Lord of My Heart 〜呪われ伯爵の白い(はずだった)結婚〜

 努力で得られるものではなく、生来の感性に由来する部分を、オリヴィアは十分に持っているように思えた。──少なくとも、ローナンにはそう思えた。

 そして、ノースウッド伯爵、エドモンド・"堅物"・バレットの顔の筋肉に、これほど変化に富んだ動きをさせる女性は二度と現れないだろうと断言できる。

 ここ数日のエドモンドは百面相をするようになった。

 ローナンは時々、肖像画家を呼んできてスケッチさせたい誘惑に捕らわれる。きっと、面白いノースウッド伯爵像が山ほど出来上がるにちがいない。

 今もそうだ。
 エドモンドは大げさな勢いでパンとヤギ乳のチーズを交互に食しながら、食堂の入口を苛々と見つめている。

 そろそろオリヴィアが食堂に下りてきていい時間だからだ。