Lord of My Heart 〜呪われ伯爵の白い(はずだった)結婚〜

 ノースウッド領バレット家での二日目の朝は、冷たく心地よかった。

 窓を閉めていても感じる澄んだ空気に、カーテン越しでも分かる青い空。
 こんな静かで美しい朝──愛する夫の力強い腕に抱かれて目覚めることができたなら、どれほど幸せだろう。普通に考えれば、オリヴィアにはその権利があるように思えた。
 なんといっても新婚なのだ。

 しかしオリヴィアは、いつも通り一人ぼっちのベッドで目を覚ました。
 一人部屋の。
 独身女性向けのベッドで。

(な、泣いちゃだめ……っ)
 遠くから聞こえる鶏の朝の雄叫びが、空しく響いていた。