Lord of My Heart 〜呪われ伯爵の白い(はずだった)結婚〜

「ピート。いくらあなたでも、私の妻にそこまで言う資格はない」
 壁、が。
 喋った。それも、低く張りのあるバリトンの、明晰な声で。

 それに、いつのまにか、オリヴィアの両二の腕は誰かにしっかりと握られている。力強く、しかし同時に優しい腕だった。
 オリヴィアは驚いて顔を上げた。

「エドモンド」
 背後で、老執事の声がする。
「お前は父親よりも愚かな男になりそうだな」

「そうかも知れませんね。あなたが、そうだったように」
 と、エドモンドは答えた。
 オリヴィアを抱く彼の腕に、さらに力が入った気がした。