オリヴィアの荷物はまだ衣装箱に入ったままだったから、今朝使ったブラシや寝着を箱におし返すだけで十分だった。
問題はこれをどうやって運ぶかだ。
これを持ち帰らなくても実家に帰れば必要なものはすべて揃っているが、それでも三日に渡る道中があるから、置いていくわけにはいかない。
「ジョー。ジョーはどこにいるの?」
廊下に出て、昨日知り合ったばかりの小姓の名を呼ぶ。
返事はなかった。
それどころか、屋敷はがらんとしていて、人の気配を感じない。
まだ午前中だから、主人の寝室のある階では、使用人や女中が忙しく歩き回っていてしかるべきなのに。
「ジョー! お願いよ、どこにいるの」
今度は、少しヒステリックに声を上げた。
すると突然、すぐそばにあった扉が勢いよく開いて、オリヴィアは驚きに飛びのいた。開いた扉から出てきたのは、なんと、例の老執事──ピーター・テラブだった。
ぼさぼさの白髪が、それは勢いよく四方に広がっていて、羽を広げたオス孔雀のような迫力を放っている。
しかし、服装は昨日のような執事の格好ではなかった。
黒地のゆったりとしたガウンに、ふわふわとした白い室内履き……そして、寝起きの人間独特の細められた瞳。
どう見ても、彼は目を覚ましたばかりだった。
「……何をしておる、小娘」
老執事(であるはずの人物)は、地獄から聞こえてくるようなしわがれた声で、ゆっくりと言った。
そのあまりの迫力に、オリヴィアはひるんで立ち尽くした。
問題はこれをどうやって運ぶかだ。
これを持ち帰らなくても実家に帰れば必要なものはすべて揃っているが、それでも三日に渡る道中があるから、置いていくわけにはいかない。
「ジョー。ジョーはどこにいるの?」
廊下に出て、昨日知り合ったばかりの小姓の名を呼ぶ。
返事はなかった。
それどころか、屋敷はがらんとしていて、人の気配を感じない。
まだ午前中だから、主人の寝室のある階では、使用人や女中が忙しく歩き回っていてしかるべきなのに。
「ジョー! お願いよ、どこにいるの」
今度は、少しヒステリックに声を上げた。
すると突然、すぐそばにあった扉が勢いよく開いて、オリヴィアは驚きに飛びのいた。開いた扉から出てきたのは、なんと、例の老執事──ピーター・テラブだった。
ぼさぼさの白髪が、それは勢いよく四方に広がっていて、羽を広げたオス孔雀のような迫力を放っている。
しかし、服装は昨日のような執事の格好ではなかった。
黒地のゆったりとしたガウンに、ふわふわとした白い室内履き……そして、寝起きの人間独特の細められた瞳。
どう見ても、彼は目を覚ましたばかりだった。
「……何をしておる、小娘」
老執事(であるはずの人物)は、地獄から聞こえてくるようなしわがれた声で、ゆっくりと言った。
そのあまりの迫力に、オリヴィアはひるんで立ち尽くした。


