結婚式の直前まで顔も見たことのない男だったにせよ、オリヴィアは夫になる者に尽くそうと考えていた。
だって、どうせしなければならない結婚生活なら、愛情と幸せがあった方がいいに決まっている。この渋面の男を目の前にしても、その決心は揺るがなかった。
「ノースウッド伯爵──」
オリヴィアは小さな口を開いた。
自分の声が年よりずっと幼く聞こえることを知っているオリヴィアは、なんとか精一杯大人の女らしい艶のある話し方をしようと試みた。
狭い馬車の中で、声は嫌でもよく反響する。
「ご領地は自然に溢れたとても美しい場所だとうかがっていますわ。私、待ちきれない気持ちですの」
するとエドモンド・バレットは意外なものを聞いたと言わんばかりに両眉を上げて、オリヴィアの方へ向き直った。グリーンの瞳が、オリヴィアの頭の先からつま先までを素早く見回す。
オリヴィアは思わず緊張したが、それを見せまいと息を呑み、背筋を伸ばした。
エドモンド・バレットは厳かにオリヴィアを見下ろしたまま、よく抑制のきいた低い声で告げる。
「あまり期待はしない方がいいだろう、マダム」
かなり素っ気ない口調だ。声に棘があったら、こんな感じ。
だって、どうせしなければならない結婚生活なら、愛情と幸せがあった方がいいに決まっている。この渋面の男を目の前にしても、その決心は揺るがなかった。
「ノースウッド伯爵──」
オリヴィアは小さな口を開いた。
自分の声が年よりずっと幼く聞こえることを知っているオリヴィアは、なんとか精一杯大人の女らしい艶のある話し方をしようと試みた。
狭い馬車の中で、声は嫌でもよく反響する。
「ご領地は自然に溢れたとても美しい場所だとうかがっていますわ。私、待ちきれない気持ちですの」
するとエドモンド・バレットは意外なものを聞いたと言わんばかりに両眉を上げて、オリヴィアの方へ向き直った。グリーンの瞳が、オリヴィアの頭の先からつま先までを素早く見回す。
オリヴィアは思わず緊張したが、それを見せまいと息を呑み、背筋を伸ばした。
エドモンド・バレットは厳かにオリヴィアを見下ろしたまま、よく抑制のきいた低い声で告げる。
「あまり期待はしない方がいいだろう、マダム」
かなり素っ気ない口調だ。声に棘があったら、こんな感じ。


