* * *
調理場で二人きりになった兄弟は、しばらく無言で、探るようにお互いを見つめ合いながら立っていた。
こういう時、沈黙を破るのは大抵ローナンの方だ。
呆れたような目でエドモンドを見やりながら、ぽつりと呟くように言った。
「可哀想に。説明くらいしてやったらどうなんだい? まさか、本当に僕たちに嫉妬したからなんて言わないだろうな。あの顔を見たかい? きっと今頃、一人で泣いているだろうね」
エドモンドに荷物をまとめろと言われた後、オリヴィアはしばらく石像のように固まっていた。
青い瞳を揺らし、懇願するようにエドモンドを見つめていた。
『嘘だと言って』と、言われている気がした。
それはそうだろう──どこの誰が相手かは知らないが、不貞を働いたおかげで妊娠した「つけ」を、エドモンドに払わせようとしていたのだ。
計画が破れて、今頃さめざめと泣いていても不思議ではない。
エドモンドは弟を睨みつけると、低い声で言った。
「彼女は妊娠しているらしい。そして、相手は間違いなく私ではない」
「ええ!?」
ローナンは体重を預けていた調理台の端から落ちそうになった。
「何だって急にそんなことになるんだい? あんなに細っこいのに……まぁ、胸は確かにあるけども」
「ローナン!」
「怒鳴るなよ、事実じゃないか! それに、どうしていきなり、そんな事が分かったんだよ。まだノースウッドに着いて昨日の今日で、医者を呼んだわけでもないんだろう?」
「マギーが言っていたんだ。彼女には経験がある。それで十分だ」
「マギー? 彼女が何を言っていたっていうんだ。僕は影から見てたけど、あのクソ不味いレバーのなれ果てを彼女に出して、彼女がそれを吐いたら、走って外へ行ってしまっただけだぞ!」
「その前に何かあったのかも知れない。とにかく、マギーはそうだろうと言うんだ!」
「だけど……っ」
調理場で二人きりになった兄弟は、しばらく無言で、探るようにお互いを見つめ合いながら立っていた。
こういう時、沈黙を破るのは大抵ローナンの方だ。
呆れたような目でエドモンドを見やりながら、ぽつりと呟くように言った。
「可哀想に。説明くらいしてやったらどうなんだい? まさか、本当に僕たちに嫉妬したからなんて言わないだろうな。あの顔を見たかい? きっと今頃、一人で泣いているだろうね」
エドモンドに荷物をまとめろと言われた後、オリヴィアはしばらく石像のように固まっていた。
青い瞳を揺らし、懇願するようにエドモンドを見つめていた。
『嘘だと言って』と、言われている気がした。
それはそうだろう──どこの誰が相手かは知らないが、不貞を働いたおかげで妊娠した「つけ」を、エドモンドに払わせようとしていたのだ。
計画が破れて、今頃さめざめと泣いていても不思議ではない。
エドモンドは弟を睨みつけると、低い声で言った。
「彼女は妊娠しているらしい。そして、相手は間違いなく私ではない」
「ええ!?」
ローナンは体重を預けていた調理台の端から落ちそうになった。
「何だって急にそんなことになるんだい? あんなに細っこいのに……まぁ、胸は確かにあるけども」
「ローナン!」
「怒鳴るなよ、事実じゃないか! それに、どうしていきなり、そんな事が分かったんだよ。まだノースウッドに着いて昨日の今日で、医者を呼んだわけでもないんだろう?」
「マギーが言っていたんだ。彼女には経験がある。それで十分だ」
「マギー? 彼女が何を言っていたっていうんだ。僕は影から見てたけど、あのクソ不味いレバーのなれ果てを彼女に出して、彼女がそれを吐いたら、走って外へ行ってしまっただけだぞ!」
「その前に何かあったのかも知れない。とにかく、マギーはそうだろうと言うんだ!」
「だけど……っ」


