Lord of My Heart 〜呪われ伯爵の白い(はずだった)結婚〜

「兄さんがそんなに嫉妬深いとは知らなかったよ。でも、本当に何でもないんだ、義理の姉弟だろう? 少し会話をしながら料理していただけで……」
「嬉しそうなところを悪いが、彼女がお前の義姉でいる期間は、恐ろしく短くなるだろう」

「はぁ?」
 と、ローナンは素っ頓狂な声を上げた。

 まさか、義理の弟と一緒に仲良く料理をしていただけで、妻と離縁したくなるというのだろうか?

 それは、恐ろしくエドモンドに似つかわしくない横暴に思えた。
 エドモンドはいつだって、それこそローナンの物心がついたばかりの幼い頃から人一倍我慢強く、常に冷静で何事にも平常心を失わず、それでいて熱心にバレット家を守ってきた堅物だった。

 彼の冷淡さは、特に色恋ごとに発揮された。
 ローナンが覚えている限り、エドモンドは、婦人への情愛は欲望が見せる幻想であると断じていた。そんな彼が、迎えたばかりの妻を嫉妬で拒否しだすとはとても思えない……。
 しかし、恋とは不思議なもので、強情な男を簡単に変えてしまうこともある。

「兄さん……?」

「マダム」
 エドモンドは、食いしばった歯の間から絞り出すように言った。

「貴女は寝室へ戻り、荷物をまとめるべきだ。サー・リッチモンドの屋敷へ戻り、彼に伝えなさい。私は、貴女のような重荷を背負うことはできない、と」