* * *
エドモンドは鋼鉄の理性を誇っていた。少なくとも、ほんの少し前までは。
しかし、四日ほど前に妻にしたばかりの女性が──まだ、抱きしめたことさえない幼妻が──妊娠していると知っては、鋼鉄などひとたまりもなかった。
手に持っていたブラシを地面に投げつけると、厩舎の中の馬たちは興奮気味に足踏みをして怯えたが……知ったことか。
エドモンドは厩舎を飛び出し、屋敷に向かって大股で進んだ。
これが、膨大な持参金の本当の理由だったのか? ──こういう罠に貧乏貴族を落とし入れようとする輩がいるのを、エドモンドは確かに知っている。
陥れられたことと、妻に裏切られたことへの怒りは、真面目なエドモンドを激昂させるに充分な威力を持っていた。
なぜ。
オリヴィアを妊娠させるのは、この世で最も避けるべきことの一つだと考え、馬車の乗り降りを助けるなどの必要性からくるもの以外、指一本触れてさえいなかったというのに……どこの誰だか知らない馬の骨が、すでに彼女を抱いていたというのだ!
それは屈辱であり、怒りであり、嫉妬だった。
エドモンドはオリヴィアの元へ急いだが、彼女の前に躍り出たとき、自分が何をするのかは予想さえつかなかった。
ただ、彼女の顔を見なければ気がすまない……。
そう、心が叫んでいた。
エドモンドは鋼鉄の理性を誇っていた。少なくとも、ほんの少し前までは。
しかし、四日ほど前に妻にしたばかりの女性が──まだ、抱きしめたことさえない幼妻が──妊娠していると知っては、鋼鉄などひとたまりもなかった。
手に持っていたブラシを地面に投げつけると、厩舎の中の馬たちは興奮気味に足踏みをして怯えたが……知ったことか。
エドモンドは厩舎を飛び出し、屋敷に向かって大股で進んだ。
これが、膨大な持参金の本当の理由だったのか? ──こういう罠に貧乏貴族を落とし入れようとする輩がいるのを、エドモンドは確かに知っている。
陥れられたことと、妻に裏切られたことへの怒りは、真面目なエドモンドを激昂させるに充分な威力を持っていた。
なぜ。
オリヴィアを妊娠させるのは、この世で最も避けるべきことの一つだと考え、馬車の乗り降りを助けるなどの必要性からくるもの以外、指一本触れてさえいなかったというのに……どこの誰だか知らない馬の骨が、すでに彼女を抱いていたというのだ!
それは屈辱であり、怒りであり、嫉妬だった。
エドモンドはオリヴィアの元へ急いだが、彼女の前に躍り出たとき、自分が何をするのかは予想さえつかなかった。
ただ、彼女の顔を見なければ気がすまない……。
そう、心が叫んでいた。


