Lord of My Heart 〜呪われ伯爵の白い(はずだった)結婚〜

「君は料理したことがある?」
 だしぬけにローナンがたずねた。

 オリヴィアは首を横に振る。ローナンは人懐っこそうな笑顔をさらに緩めて、声を上げて笑った。
 そして、そばの台に乗っていた折籠の中から数個の卵を拾い上げ、得意そうに肩の高さに掲げてみせた。

「では、僕が君の朝食を作って差し上げましょう、マダム。少なくともマギーのスープよりは美味しいものができるはずだよ」
「ま、まぁ、本当に?」
「それとも君が自分で作るかい?」
「作ったことがないんです。でも、教えていただければ何かできるかもしれないわ」
「そうこなくちゃ。義理の弟姉が一緒に朝食をつくるなんて素敵じゃないか」
「あなたは料理ができるの?」

 いつのまにか、オリヴィアはできるだけ大人っぽい話し方をするのを放棄していた。それが本当は彼女をより可愛らしく見せるのだということを自覚しないまま。

 ローナンはすっとオリヴィアに腕を伸ばし、彼女の手をとるとそこに軽く口付けて、厨房台の前に彼女を誘導した。

「もちろんですよ、マダム、僕の料理は兄さんの料理の次に美味しいんだ」