ローナンはキッチンの奥に進むと、井戸水の汲まれた樽に木製のコップを入れて、水をすくった。
「はい、どうぞ」
と言って、微笑みながらオリヴィアに水の入ったコップを差し出す。
オリヴィアは礼を言うかわりに軽く膝を折って感謝を表し、ありがたくそのコップを受け取った。そのままごくりと飲みはじめると、キンと冷えた水が喉を潤していく。
都心では決して味わえないような澄んだ甘味のある水だった。
厨房の台に寄りかかって腕を前で組んでいるローナンは、そんなオリヴィアの様子を眺めながら微笑を絶やさない。
なんと。
オリヴィアはまだ夫の笑顔を見たことがないから、妙な気分だ。
水を飲み干してから、顔を上げてローナンをあらためてよく見てみる。やはり彼はエドモンドによく似ていて、笑顔でなければ間違えてしまうかも知れなかった。
「どうだい、エドモンド兄さんとは、上手くいっているかな。兄はかなりの堅物だから、退屈でしょう」
「分かりません……その、まだあまりお話したこともなくて」
「そうか、いやはや。弟として謝りますよ。兄はどうしようもない無骨な男で。気を悪くしないでしてやってくれるかな」
「それはもちろんです」
とは言ったが、謝られたことでオリヴィアの気持ちは少しスッとしていた。
とりあえずノースウッドの全ての男が、エドモンドのように無口であったり、僧侶のような貞操観念を持っているわけではなさそうだと分かったのも、歓迎すべきことだ。
新しくできた義弟・ローナンは、いかにも愉快そうにオリヴィアを上から下まで観察している。オリヴィアは都会っ子として、そして金持ちの娘として、人から見られることには慣れていたので、リラックスしたままローナンの見たいようにさせていた。
それにしても何故、誰も彼もがオリヴィアを「想像していたのと違う」と評するのだろう?
エドモンドはなにか、たとえばオリヴィアと正反対の、長身で厳つい金髪の大女を妻に迎えたいとでも公言していたのだろうか?
「はい、どうぞ」
と言って、微笑みながらオリヴィアに水の入ったコップを差し出す。
オリヴィアは礼を言うかわりに軽く膝を折って感謝を表し、ありがたくそのコップを受け取った。そのままごくりと飲みはじめると、キンと冷えた水が喉を潤していく。
都心では決して味わえないような澄んだ甘味のある水だった。
厨房の台に寄りかかって腕を前で組んでいるローナンは、そんなオリヴィアの様子を眺めながら微笑を絶やさない。
なんと。
オリヴィアはまだ夫の笑顔を見たことがないから、妙な気分だ。
水を飲み干してから、顔を上げてローナンをあらためてよく見てみる。やはり彼はエドモンドによく似ていて、笑顔でなければ間違えてしまうかも知れなかった。
「どうだい、エドモンド兄さんとは、上手くいっているかな。兄はかなりの堅物だから、退屈でしょう」
「分かりません……その、まだあまりお話したこともなくて」
「そうか、いやはや。弟として謝りますよ。兄はどうしようもない無骨な男で。気を悪くしないでしてやってくれるかな」
「それはもちろんです」
とは言ったが、謝られたことでオリヴィアの気持ちは少しスッとしていた。
とりあえずノースウッドの全ての男が、エドモンドのように無口であったり、僧侶のような貞操観念を持っているわけではなさそうだと分かったのも、歓迎すべきことだ。
新しくできた義弟・ローナンは、いかにも愉快そうにオリヴィアを上から下まで観察している。オリヴィアは都会っ子として、そして金持ちの娘として、人から見られることには慣れていたので、リラックスしたままローナンの見たいようにさせていた。
それにしても何故、誰も彼もがオリヴィアを「想像していたのと違う」と評するのだろう?
エドモンドはなにか、たとえばオリヴィアと正反対の、長身で厳つい金髪の大女を妻に迎えたいとでも公言していたのだろうか?


