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オリヴィアはそのまま、エドモンドの腕の中で眠ってしまった。
本来なら今日は終わらせてしまわなければならない領地の仕事がいくつもあったのだが……フン、知ったことか。
エドモンドにとって今、最も、そして唯一、大切なものは、彼の腕の中に眠っているのだから。
気持ち良さそうに目を閉じているオリヴィアの肌をなで、髪をいじり、肩を抱きしめながら、エドモンドはこの瞬間を一刻でも長く、ほんの少しでもさらに深く、感じ、覚えようと努力した。
大丈夫だ。
わたしは彼女をいかせない。
絶対に、絶対にだ。
近くに誰かが近づいてくる足音が聞こえて、エドモンドは気だるげに顔を上げた。
ちょうど、前からローナンが近づいてくるところだった。
眠っているオリヴィアに気が付いたのか、ローナンは数メートル手前で少し回り下って、二人が寄りかかっている大木の横にたどり着いた。
大木の幹に片腕を置き、寄り添っているエドモンドとオリヴィアを見下ろしながら、ローナンは顔をほころばせた。
「ねえ、兄さん。恋に落ちるのは簡単だけど、面倒なのはその後だよね」
エドモンドは片眉をつり上げ、弟をねめつけた。
しかしまた、オリヴィアと、彼女の中で育っている赤ん坊のふくらみを見つめ直して、静かに答える。
「お前にもいつか分かるさ。そのうちに、な」


