Lord of My Heart 〜呪われ伯爵の白い(はずだった)結婚〜


 その日の朝食が終わると、エドモンドはオリヴィアを外の散歩へ誘った。

 二人は手をつないで、屋敷から菜園へつづく砂利道をゆっくり歩いた。
 道すがら、何気ない会話をする。
 しかし実際、喋っていたのはオリヴィアだけで、エドモンドは適当な相づちを時々うってはくれたが、自ら話題を提供することはなかった。

 オリヴィアも、出来るだけ二人の間に横たわる繊細な問題には触れずにいた。
 しっかりと繋がれた手を、エドモンドは何度も確かめるようにぎゅっと握り直しながら歩く。
 歩調はゆっくりで、彼女を気遣ってくれているのが十分に伝わってきた。

 胸に熱いなにかが上ってきて、オリヴィアはむしょうに泣いてしまいたい気分になった。

 幸せとは、こんなに繊細で、切ないものだっただろうか?

 大丈夫と言い続けてきたのはオリヴィアのはずなのに、いざ時が近づいてくると、不安に溺れそうになる瞬間が何度もあった。
 それでも、レディとその母馬を見たあとは、少し心が落ち着くのだけれど……。


 途中、生気いっぱいに緑の葉を茂らす大木の下で、二人は腰を落として休むことにした。
 最近のオリヴィアは疲れやすい。
 すぐウトウトしてしまうし、そんな妻をエドモンドは常に注意深く気遣ってくれている。エドモンドが大木の幹に背を預け、オリヴィアは彼の胸に身体全てを預けるようにして座った。

 暑い日だったが、空気は乾いていて、爽やかな風が吹いている。

 しばらくは静かだった。
 朝日はすでに昇り、木漏れ日が二人の間にちらちらと落ちて踊り、オリヴィアの眠気を誘う。

 エドモンドの右手は、いつもそうするように、オリヴィアの髪を無造作にいじっていた。そして左の手は大きく開かれ、オリヴィアのふっくらとした腹部にそっと当てられていた。