オリヴィアは、苦行僧のような渋面を隠そうともしないエドモンド・バレットをちらりと上目遣いで見やった。

 彼の瞳の色は生命力に溢れたグリーンだが、眉間の深い皺はいかんともしがたい。
 視線はひたすら小窓に張りつき、外の景色を追っていた。ふたりを乗せた二頭立ての馬車は、ガタガタ、ガラガラとやかましい音を立てながら石道を進んでいく。

 時々、オリヴィアの細い体は、馬車の揺れにのって小さく跳ねた。

 対して目の前に座る夫は、まるで揺れなど存在しないかのように静かに腰を落ち着けて座っていて、ついでにいえば、正面のオリヴィアなどまるで存在していないかのような冷淡な表情だった。

 ふたりが馬車に乗ってもう一時間は過ぎようとしているはずだが、会話らしいものは未だにほとんどない。

 しかし、エドモンド・バレットは立派な体躯をした男性だった。

 肩幅が広く、胸元はがっしりとしていて、それが綺麗に引き締まった腰に続いている。足は長いが、ひょろりと形容するには立派すぎて、まるで神話の男神のようだ。
 日に焼けた顔は彫りが深く、美しいというよりは精悍な雰囲気で猛々しいのに、目元だけは繊細な感じがした。灰色の上着にズボン、黒いクラヴェットという簡素な装いも、彼が着こなすと豪華に見える。

 そう、オリヴィアはとても魅力的な男性と結婚したらしい──。