「そしてわしは、妻が生まれたばかりの息子を残しわしから逃げたのを、認められなかった。そういうことだ」
エドモンドの手に口を押さえられたまま、オリヴィアは大きく目を見開いた。
今、ピートはなんと……?
「逃げた? 亡くなった、ではなく?」
オリヴィアが感じたのと全く同じ疑問を、エドモンドがゆっくりと、一語一語をはっきり発音しながら言った。
いつのまにかエドモンドの手はオリヴィアの口を解放していたが、オリヴィアは何も言えなかった。
ピートはすぐには答えず、ふいと横の窓に顔を向けると、暗すぎて見えるはずもない夜景を見つめるふりをしていた。
「わしの母は確かに出産で亡くなっているという話だ。乳母から聞いた。お前の母親とその妹のことは疑いもない。彼女らも同じ理由で亡くなっている。しかし……あの馬鹿女は違う」
ピートの声はわずかに震えているように聞こえた。「あれはわしから逃げおったのだ。しかも、わしが目をかけてやっていた馬丁の息子とともに」
重い沈黙が流れた。
エドモンドは、ピートの告白の意味を正しく理解するために、数秒なにも言わずに祖父の輪郭を見つめていた。ふざけた男ではあるが、こんなふうに冗談を言う性質でないのは、エドモンドもよく分かっている。
言葉を失って固まっているオリヴィアの手を握ったまま、背筋を伸ばしたエドモンドは、喉にこみ上げてくる唾液をごくりと飲み込んだ。
これが……?
こんな単純なことが、バレット家の真実だと?


