Lord of My Heart 〜呪われ伯爵の白い(はずだった)結婚〜


 断崖絶壁に立たされたエドモンドは、危うく笑いを漏らしそうになった。
 オリヴィアはこの懇願がどんな結果を導くのか、分かっていないのだ。もう、呪いがあってもなくても、エドモンドの存在そのものから際限なく溢れ出るこの欲望に、彼女を喰い尽くしてしまいそうだった。

 平穏なひとときなど一瞬たりとも与えてやれないくらい、愛し尽くしてしまいそうだった。

「覚悟はできているのか?」
 と、エドモンドはざらついた声で呟いた。「わたしの想いを受け止めきれるのか? わたしはあなたを最後のひとかけらまで求め続けるだろう。それも貪欲に」

 優雅な貴族風の求愛は期待できないだろう。
 ままごとでもない。
 そして、一度でも愛してしまったら、それは回を重ねるごとにさらに深く激しくなってゆく。

 オリヴィアは一瞬たりともエドモンドから視線を離さなかった。
 数回だけ大きな瞳を瞬いて、こくりと小さくうなづく。

「わたしを信じてください。そして、『わたし達』を信じて。きっと道を見つけられるから」

 しばらくの沈黙ののち、エドモンドの大きな手が、再びオリヴィアの手を握り返した。
 ぎゅっと。
 二人は、互いの胸に希望が溢れはじめているのを、確かに感じ合っていた。

 舞踏会の混乱はまだ続いていて、時々往来がたたずむ二人を邪魔そうにねめつけたが、エドモンドもオリヴィアもそんなことには一向に構わなかった。