オリヴィアの身体をゆっくりと床に下ろしたエドモンドは、そのまま彼女の手を優しく握り、前に進むよううながした。
興奮と喜びと、それ以外にもなにか説明のつかないもどかしい期待とで、オリヴィアの足下はかつてないほど不安定だった。それでもきちんと夫について歩けたのは、彼の手がしっかりとオリヴィアを支えていてくれたからだ。
ふわふわ、ふらふらとした感覚がオリヴィアを包む。
周囲から好奇のまなざしを向けられる覚悟をしていたオリヴィアだが、実際はどの客人も自分の馬車や御者を呼ぶのに躍起になっていて、他人にはほとんど関心を払っていない状況だった。
それをいいことに、食卓に残った高価な銀食器や珍しいポーセリンの置物をポケットにつめ込んでいる輩までいる。
それでも二人はどうにか群衆の中をゆっくり移動し、玄関口に近づくことに成功した。
夫の長身は、混乱した招待客たちの波をかいくぐるのに一役買っているようだ。その間も彼は、オリヴィアの手を離すまいとしっかり握ったままでいた。
繋がれた手から上にたどるように、オリヴィアはエドモンドを見上げた。
ああ、今夜のエドモンドはいつもに増して背が高く、たくましく見える。
オリヴィアはこのままうっとりと主人の魅力的な横顔を見つめていたい誘惑に駆られたが、なんとか自分を奮い立たせて、混乱した屋敷の出口へ向かうのに集中しようとした。
しかし、すっかり入り乱れた人だかりを前にして、オリヴィアはふと大事なことを忘れているのに気がついた。


