すると、人々のけたたましい足音と騒音が部屋の入り口までたどり着き、オリヴィアはやっと現実に取り戻された。
なんと!
いつの間にか、入り口の向こうに大きな人垣ができている。
本来ならプライベートを守ってくれるはずの扉は、当のエドモンドがなぎ倒したせいで存在していないので、すでにいくつもの好奇に満ちた視線が二人に注がれていた。
オリヴィアの顔はさらに赤く染まっていった。
老若男女が混じったひじょうに色彩豊かな人垣の中に、頭一つ背の高いローナンの顔が混ざっていたが、そのローナンも驚愕の表情で両目を大きく見開いているだけだ。
こんなに気恥ずかしい思いをしたことはいまだかつてなかった。
できる限り身を縮めたオリヴィアは、エドモンドの胸にすがりつくようにして人々の視線から逃れようとした。
もちろん成功したとは言いがたかったが、雨の匂いとエドモンドの胸から伝わる体温に、つかの間の幸せを味わうことができたのは事実だった。
オリヴィアはエドモンドの胸元に顔を押し付けた。
「そうだ、マイ・レディ」
エドモンドは満足そうな低い声でオリヴィアに呟いた。「そうやってわたしに抱きついていなさい。あなたは今、わたしの保護欲と優越感を見事に満たしてくれている」
身体の芯まで響くようなバリトンでそうささやくなり、エドモンドは妻を抱えたまま前へ歩き出した。
オリヴィアはますます縮こまり、この身の置き所がない状態から一刻も早く抜け出せることだけを祈って、すべてをエドモンドに任せることにした。
幸い、夫は取り立てて社交的なタイプではないから、この状態で周囲と世間話をはじめることはまずないだろう。
オリヴィアの予想通り、エドモンドは無言だった。
そして観衆も、エドモンドが近寄ると静かになった。
彼らはなにも言わずに横にしりぞき、エドモンドが通りやすいように道をあけた。なにかの魔法を見ているようだった。


