エドモンドは馬用のブラシを柵の上に置いて、憮然とマギーを見下ろした。
今年五十五歳になるマギーは、確かに、エドモンドやその腹違いの弟ローナンの乳母として、また女中頭として、バレット家の全てを守ってきてくれた女性だった。
エドモンドは彼女に深い敬意を払っているし、彼女もそれを知っていて、それに満足しているようだった。
が──今のマギーが何を喚いているのか、エドモンドには皆目見当もつかなかった。
まさか、ボケてしまうには早すぎる気がする。特にマギーのような女性は、どんなに年老いても若者より明晰なままなのが常だ。
「私がボケたんじゃないのかって顔をしてるね──」
マギーは唸るように言った。
「いや、そんな事はない。本当にわからないんだ」
「これだから男って奴は! やることをやっちまったら、できるものができちまうんだよ! まぁ、結婚したんだからいいとしようが……それにしても……」
「は?」
マギーは何やら口の中でぶつぶつと聞こえない文句をつぶやいていた。
そして、おもむろに顔を上げる。
「私は思うんだけどね」
マギーの声は高揚していた。「マダムは妊娠していると思うんだよ……あんたの子だろう?」
今年五十五歳になるマギーは、確かに、エドモンドやその腹違いの弟ローナンの乳母として、また女中頭として、バレット家の全てを守ってきてくれた女性だった。
エドモンドは彼女に深い敬意を払っているし、彼女もそれを知っていて、それに満足しているようだった。
が──今のマギーが何を喚いているのか、エドモンドには皆目見当もつかなかった。
まさか、ボケてしまうには早すぎる気がする。特にマギーのような女性は、どんなに年老いても若者より明晰なままなのが常だ。
「私がボケたんじゃないのかって顔をしてるね──」
マギーは唸るように言った。
「いや、そんな事はない。本当にわからないんだ」
「これだから男って奴は! やることをやっちまったら、できるものができちまうんだよ! まぁ、結婚したんだからいいとしようが……それにしても……」
「は?」
マギーは何やら口の中でぶつぶつと聞こえない文句をつぶやいていた。
そして、おもむろに顔を上げる。
「私は思うんだけどね」
マギーの声は高揚していた。「マダムは妊娠していると思うんだよ……あんたの子だろう?」


