最初、エドモンドの動きは、静かで、どちらかといえばゆっくりとしたものでさえあった。
無言のまま燭台に手を伸ばすと、エドモンドはそのままロウソクを一本持ち上げ、そしてすぐ隣にあったデカンターを別の手で掴んだ。
「もし、お前たちが、わたしの想像より早く走ることができれば、」
大股の一歩で、エドモンドは男たちに近づきつつ、言った。「命くらいは助かるだろう」
恐怖のせいで、ベルフィールド子爵とヒューバートの顔がいびつに凍りつく。
その瞬間、エドモンドは目にも留まらぬ速さでデカンターを振り上げ、中の酒をベルフィールドの服の上に振りかけたと思うと、素早くそこにロウソクを投げ放った。
「ぎゃああ! 火が、火がぁ!」
乱れた礼服は裾からまたたく間に燃えだし、ベルフィールドは狂ったように手足をばたつかせて燃え上がる火に抵抗しようとした。
酔いは覚めたのだろう。
しかし、酒のアルコールに勢いをえた火を消すことはできない。
ベルフィールドの服はごうごうと燃え盛りはじめ、しばらく狂人のように踊り狂ったあと、屋敷中を震撼させるような怪奇な悲鳴を上げて部屋を駆け出した。
階段を転げ下り——文字通り転げ落ちたようだった——身の毛がよだつような悲鳴を上げたまま、大広間、舞踏室を駆け抜ける。ガシャーンという派手な音がしたあと、ベルフィールドの悲鳴はやっと収まった。
あまりの出来事を前に、オリヴィアはベッドの上で硬直したまま声を出せずにいた。
それはヒューバートも同じだったが、オリヴィアとは違い、歯の根も合わぬほど震えていた。
次は我が身だと、よく分かっていたからだ。
「そしてヒューバート、お前の罪はさらに重い」
続くエドモンドの声はさらに低く、危険な響きを有していた。
実際にヒューバートがしたことといえば、ベルフィールド子爵の悪事に手を貸そうとしただけだが、彼は屋敷の主人だったから、それだけ責任は大きくなる。
獰猛な目つきのエドモンドに視線を向けられ、ヒューバートは縮み上がった。
ま さ か ……


