Lord of My Heart 〜呪われ伯爵の白い(はずだった)結婚〜


 ——再びあふれ出す(オリヴィア)の涙を目撃して、エドモンドの心は、這い上がってくる禍々(まがまが)しい怒りでどす黒く染まっていくのを止められなかった。
 また、止める気もなかった。
 これほどの怒りを感じたことは、未だかつてない。

 そして、これほどの愛を感じたことも、未だかつてなかった。

 ベッドの上に座っているオリヴィアの小柄な身体は、乱れかけた桃色のドレスに包まれて頼りなげに震えている。まるで暗闇を照らす唯一の光のように、エドモンドの視線を引きつけて離さなかった。

 そして、自分を見つめる、彼女の大きな水色の瞳……。

 いつも、表面では否定しながらも、魂の奥底では切望していた願いの答えが、そこには宿っていた。
 わたしの心。わたしの愛。わたしの……オリヴィア。

 この、愛と呼ばれる胸を焦がす想いは、たとえ形を持たなくとも、エドモンドの中にはっきりと存在している。
 エドモンドは、今ほど何かを守りたいと思ったことはなかった。



 短く息を吸ったエドモンドは、床に這いつくばる二人の男を交互に見下ろしながら、ざらつくような低い声でこう忠告した。

「そして、お前たちがわたしの妻にしたことを考えれば、わたしにはお前たちを殺す権利があるだろう」と言って、一歩前に進んだ。「ゆっくりと、時間をかけて、残酷に」

 二人の男たちは、怯えた子犬のように小刻みに震えだした。

「し、しかし……こ、行為はまだ……み……未遂で……」

 しかしエドモンドは、敗北者たちの言い訳には一片たりとも耳を傾けなかった。
 ただ、見るものを圧倒させる恐ろしい形相をたたえたまま、静かに窓辺にある燭台に近づいていく。

 ロウソクの明かりにくっきりと照らし出されたノースウッド伯爵エドモンド・バレット卿の顔は、まさに、怒れる中世の騎士が敵にとどめを刺そうとする瞬間のような、残虐さに満ち溢れていた。

 野外から雨が強く吹き付け、窓がカタカタと揺れている。
 雷鳴が二度とどろいた。

 ベルフィールド子爵とヒューバートは、もつれる足を必死にばたつかせながら、この修羅場から逃げようとしていた。

「ああ、外は雨が降っているな」
 と、エドモンドは逃げようとしている二人の男に穏やかに告げた。

 たったそれだけなのに、二人の男は、まるで幾千の呪いの言葉を浴びせかけられたような戦慄に襲われ、身震いした。これはなにかが起る……。
 それも、想像以上に恐ろしいなにかが。