ベッドの上に座り込んだままのオリヴィアは、ひたすらで真剣なエドモンドの視線にとらえられて、喉がからからに乾いていくのを感じた。
一秒一秒が嘘のように長く感じられて、まるで世界が、二人だけのために切り離されてしまったようだった。
部屋の中央に立ったエドモンドは肩で荒い息をしていたが、それでも疲れのようなものは一切感じさせず、今からなにをしでかすのか分からない負のエネルギーのようなものを充満させている。
オリヴィアは、夫の興奮に自分が関係しているのを、否応なしに感じ取った。
なぜなら、オリヴィアが少しでも身動きしようとすると、エドモンドの強ばった頬がピクリと波打つからだ。
これは……何かがおかしいと、オリヴィアは本能的に感じ取った。
彼の目つきはまるで、オリヴィアをそのまま頭から飲み込んでしまいたくてウズウズしている飢えた野獣のようで、これから妻と親交を深めようと思っている夫のものには見えない。
でも、そんな……。
オリヴィアには持ち上げることさえできなかった火かき棒を、いとも簡単に放り投げて床に突き刺し、無惨に曲げてしまえるだけの力の差を目撃した後では、なにをされるか分かったものではない……。
しかし、オリヴィアには覚悟があった。
夫が望んでいるのが何であれ、それを受け止め、心から彼を愛し続ける覚悟が。
もう我慢なんかできない。
もう、物分りよく待っているだけの妻ではいられない——。
「ノースウッド伯爵……わたしは、わたしは、もう」
そう、震えた声でオリヴィアが言いかけると、エドモンドは素早い動きで片手を上げて、それをさえぎる仕草をした。
彼の表情は硬く、オリヴィア以上の覚悟に満ちている。
「なにも言わなくていい、マダム。このくず共があなたに何をしたのであれ、あなたはわたしの妻だ。永遠に、なにが起ろうとも、誰もその事実を変えることはできない」
永遠に。
なにが起ろうとも。
その、あまりに鮮明な告白に、オリヴィアは息を呑んでその場に佇んだ。今、エドモンドはまぎれもない宣言をしたのだ。火を見るより明らかで、一点の曇りもない、誠実な誓いを。
まさにオリヴィアが望んでいた言葉だった。
心の底からあふれてくる喜びのさざ波に、オリヴィアは胸を震わせ、大きな水色の瞳にわずかな涙をにじませた。


