男たちは、怒りに肩を震わせるエドモンドを前に明らかな生命の危機を感じ取り、顔を蒼白にさせておののいていた。
男の酔いはすでに覚めて、目の前に突如として現れた恐怖にパニックを起こしている。
「き……君はっ、これはっ、そそう、ごご誤解だ、彼女が急に貧血をおこし……ヒエッ!」
エドモンドは一切聞く耳を持たず、目にも留まらぬほどの早さの大股で部屋を横切ったと思うと、乱暴に男の胸ぐらを掴み上げていた。
男の足は床から高く浮いて、情けなくばたついている。
「わっ、わっ、わたしはベルフィールド子爵……」
と、男が震えた声で名乗ろうとすると、エドモンドの緑の瞳はゆがめられた。
「死人に名など必要ない、この下種めが!」
エドモンドは咆哮を上げ、胸ぐらを掴み上げたまま前に突進すると、男の背中を壁に打ちつけた。壁が揺れて、優雅に掛けられていた年代物の肖像画がガクンと傾いた。
色を失った男の顔に、エドモンドの拳が放たれる。生々しい素手の戦いの音がして、オリヴィアは蒼白になった。
男もヒューバートも悲鳴を上げている。
ヒューバートは男を救おうとエドモンドの後ろに周り込み、羽交い締めにしようと苦戦していたが、まったく歯が立っていない。怒れるエドモンドを前に、二人の男はまるで子犬のように無力だった。
男たちの三つ巴の格闘は、明らかにエドモンド一人が際立っていた。
しかし、立ち往生したヒューバートが最後の手段に火かき棒を手に取ろうとしたとき、オリヴィアは悲鳴を上げて凍りついた。
エドモンドがそれに振り返る。
目の前には、火かき棒を高く振り上げたヒューバートがいた。
——ヒューバートもベルフィールドも、紳士のたしなみとしてそれなりに剣術に親しんだりしているのだろう。しかし、エドモンドは本物の戦いを知っていた。
狂った雄牛や酔っぱらった木こりを鎮めたこともあるエドモンドに、都会派の二人の男の動きはエスカルゴほど遅く見えた。
オリヴィアは悲鳴を上げたまま両手で顔を覆って、エドモンドの無事を祈った。
重い銅のかたまりがどこかに強くぶつかる鈍い音がして、部屋は一瞬だけ沈黙に包まれる。


