沈黙はたったの二秒も続かなかった。
ガブリエラの挑発的な言葉を受けたエドモンドは、ゆっくりと彼女の方へ向き直り、わずかに片方の眉を上げながら言った。
「……わたしは自分で思っていたよりもずっと嫉妬深い夫のようだ。ずっと」
悪魔のような声だった。
それも、そうとうに狂暴な悪魔が、腹を空かせてとびきり不機嫌でいる時のような、殺気立った声だ。
さすがのガブリエラも不穏な雰囲気を感じ取って、自分の誘惑が成功していないことを理解しはじめた。
本能的にじりじりと後ろにさがり、じっと相手を見つめながら壁に背をつける。
状況が不利なのは理解したが、かといってガブリエラは、はい、そうですかと自分の負けを認められるほど謙虚ではない。
エドモンドは一歩、前へ歩を進め、ガブリエラににじり寄った。
威圧的に迫ってくるエドモンドを前にして、ガブリエラは、背筋の毛が逆立つような寒気を感じずにはいられなくなっていた。今の彼には何をしでかすか分からない怖さがあった。
緑の瞳は怒りに燃えており、頬はピクリ、ピクリとひくついている。
目の前に立ったエドモンドは、普段よりさらに背が高く感じられた。
「そ……そういうことなのよ。あなたの可愛い奥さまは、この先のどこかの部屋で、私の兄と戯れているのだわ」
精一杯の強がりでもって、ガブリエラは言った。
胸をそり、鼻をつんと上げ、さも勝ち誇ったように。しかし、エドモンドの視線はガブリエラを見下すように彼女に張り付いていた。
——この、あばずれめが。
口には出さずとも、エドモンドの目ははっきりとそう宣言していた。


