慎重に、オリヴィアは火かき棒に近づき、手を伸ばした。
ドレスの裾に手元を隠すようにして、冷たい銅器の感触が手に触れるのを確かめる。よし!
確かな手応えを感じて、オリヴィアは火かき棒を片手に持ち上げようとした。
「私は本気で——きゃっ」
と、たたみ掛けようとした瞬間……持ち上げようとした火かき棒の重みで、オリヴィアはそのまま床に敷かれているカーペットに後ろ向きで倒れて、頭を打った。
ああ!
「おやまあ」
楽しんでいるような声を上げた酔っぱらいは、倒れたオリヴィアを見て、これ以上ありえないほど嫌らしい笑みを浮かべた。
オリヴィアは知らなかったのだ。
いままで暖炉の世話は必ず使用人がしてくれていた……彼らが楽々と持ち上げているように見えた火かき棒は、実はものすごく重かったのだ。


