すれ違いは、一度始まってしまうと、どうしてなかなか元に戻るのが難しいようだった。
特に、戻ろう戻ろうと努力すればするほど、運命は手厳しいいたずらを仕掛けてくるものらしい。
二階にたどり着いたオリヴィアは、いったいどこから何を探していいのか分からなくなって、軽い混乱に目眩を感じずにはいられなくなった。
ファレル家の二階は、豪華で細々とした造りの一階と比べるとだいぶ落ち着いたもので、長くまっすぐとした廊下が延々と続き、いくつもの扉が向かい合って伸びている。
いくつもの、閉じた扉が。
ピートを探し出すためには、これを一つ一つ開けて調べなくてはならないのだろうか?
オリヴィアは一瞬だけ躊躇したが、すぐに気概をとりもどして、決心を新たに前に足を進めた。
途中で誰かに出くわすことがあれば、すぐにピートの行方について尋ねることができるのに。
不幸中の幸いというべきか、あの老執事は実によく目立つ容姿をしている。
態度も大きい。
誰か彼を見たものがいれば、その消息を聞き出すのは簡単である……はずだ。
しかし。
長い廊下はほとんど人気がなく、がらんとしていて、下の階での賑やかな舞踏会がまるで嘘のように静かだった。
まあ、まだ宴もたけなわな頃であるから、二階で休もうという客人も少ないのかもしれない。もしくは、いなくなった執事を探しにくるような人も。
オリヴィアはまず、慎重に、最も近くにある扉の前に立って、短く息を吸った。
いくら切羽詰まった状況だとはいえ、礼儀を忘れていいはずがない。
まず、ノックを。


