——柔らかい生地に包まれた豊満な胸に、思わず抱きしめたくなるほどの細い腰をした、私の妻だ。
首はすっきりとしていながら官能的で、私の瞳と同じ色の首飾りをさせている。
大きな瞳は千の宝石よりも輝かしく、夏の空ほどに澄んだ色をしていて、それを見つめていると……また、見つめられると、身体中の血が沸き上がるような気分になる。
そしてなによりもあの唇……あの甘い唇。
「小柄で細身で、少し子供っぽい顔をしている」
「そ、そうですか……お、お助けしたいのは山々ですが、僕は残念ながら……舞踏室をすこし離れていたのでなんとも……」
若者はまごついた。
低いうなり声を歯の隙間から漏らしたエドモンドは、乱暴に礼服姿の若者を解放した。
今夜はじめて袖を通したと思わしき若者の黒ジャケットには、くっきりと皺がついてしまっている。まるでエドモンドの焦りが焼き印を刻んだようだ。
これが初めての舞踏会のような風体の若者だ。
もし本当に初めてなら、きっと生涯のトラウマにまってしまうだろう。舞踏会に出ると、恐ろしい形相をした大男の伯爵に襲われるのだ、と。
当の伯爵は、まだ震え上がっている若者をその場に残し、今にも走り出しそうな大股で歩き去っていっていた。
エドモンドは見るものすべてにオリヴィアの影が感じられるような気がして、今にも狂ってしまいそうな気分だった。
あの壁の影に、あの扉のむこうに、あの人垣の先に、オリヴィアがいるかもしれない。
そう思うと、屋敷中をすべて——いや、世界中をすべて、ひっくり返してしまいたくなった。
そして実際、エドモンドはそれに近い行為をしていた。目につく物すべてをなぎ倒し、あらゆる扉をこじ開け、人々を押し退ける。
エドモンドが通った後は荒れ果てた戦場のような有様となった。
それでも前へ進む彼に、幸運の女神は微笑まない。


