エドモンドは大広間を飛び出した。
しかしその先は、袋小路のようだった。ファレル家の屋敷は実用性に欠けた造りで、小さな回廊や書斎が迷路のように入り組んでおり、エドモンドが大股で三歩も進むとすぐ曲がり角に当たる。
苛立つことこの上ない。
エドモンドは、窮屈に身を包む夜会用の礼服をも呪った。
普段の彼はもっとゆったりとした服装を好む。
領地の管理に必要なあれこれに、一体どうしてフリルをあしらった襟元や、ほっそりとしたズボンが必要だというのか。クラヴェットでさえただの邪魔な飾りだと考えている彼に、ぴったりとした黒の礼服は鎖を掛けられているも同然だった。
なんでもいい、誰が相手でもいいから、怒鳴りつけてわめき散らしたい気分だ。
すると、申し合わせたように、エドモンドの前を小柄ですっきりした風貌の若者が横切った。
「止まれ、きさま!」
不運な若者は、本気の形相のエドモンドに二の腕をがっしりと掴まれ、ヒッと短い悲鳴をあげて凍りついた。
その様子はまるで、ひきつけを起こした幼児のようだ。
それだけ哀れを誘う風だったにも関わらず、エドモンドに彼を同情する気持ちはひとかけらも浮かんでこなかった。
「ノースウッド伯爵夫人を見ただろう。彼女はどこだ」
「は、は、伯爵夫人?」
勝手に断言されて、若者は凍りつき、なんとか呂律の怪しい返事をよこした。「ど、どのどのような、おおかたで?」
エドモンドが短い、しかしはっきりした舌打ちをしたので、若者はまたヒッという声を上げて目を白黒させた。
「彼女は黒髪に水色の目をしている。小柄で細身のくせに、女性であることを強調する部分は呪わしいほど豊かで、肌は白く柔らかいが張りがあり……」
ここまで言って、エドモンドは我に返ったように頬を強ばらせた。「きさまはそんなことまで知らなくていい」
「そ、そうでしょうとも」
「薄い桃色のドレスに、緑色の宝石を身に着けている、黒髪のまだ若い婦人だ」
エドモンドはできるだけ客観的にオリヴィアを表現してみた。


