白猫はそんなオリヴィアの発言について、これといった興味を示さず、また最初と同じ優雅な姿勢に戻ってあさっての方向を見つめはじめた。
本当に、猫までが私を甘く見ているんだわ。
オリヴィアは眉を寄せて白猫を見つめたあと、ファレル家の屋敷に視線を戻した。
キラキラと光って、どこか軽率で華やかで……ずっしりと重厚で、質素だが堅実そうなバレット家の屋敷とは大違いだ。
オリヴィアにはもう、自分がこんな豪奢な屋敷の住人になる将来は描けなかった。
自分の未来は、あの、大きくて無愛想な屋敷にあるとしか思えない。
変な老執事と、不味いスープを作る料理人と、お節介焼きな義理の弟に囲まれて、分厚くつもった埃をどうしようかと頭を悩ませるような。
そしてなによりも、頑固だけれど誠実な夫との愛情に満ちた人生を……。
そう、エドモンドのことを思い出しただけで、オリヴィアは頬が真っ赤に染まっていくのを感じた。
彼はオリヴィアに口づけをした。
それはもうオリヴィアがめまいを感じるほどの激しさで、百回の愛の告白よりも明白に彼の想いを突きつけてきたのだ。
あれを愛だと言わないのなら、一体何が愛と呼ぶに値するのか、オリヴィアには想像もつかなかった。
それなのに──
『私たちは別れなければならないんだ』と、自身に言い聞かせるように、エドモンドは繰り返した。
どうしてだろう。
ああ、そうだ。あの頑固な領主は……優しすぎるのだ、きっと。
『バレット家の呪い』。
あの、あるのか、ないのかさえ確かではない不運な死の連続に、彼はオリヴィアを巻き込まないようにしたくて仕方がない。オリヴィアだって、怖くないわけではない。
それでもその恐怖は、エドモンドが抱えているものに比べれば、ずっと軽いのだろう。
彼は戦っている。
愛を手に入れる幸せと、それを失う恐怖との間で、揺れながら。
オリヴィアは自分が規範的な妻でないことは分かっていたが、今だけは、エドモンドの伴侶として正しい行動を取りたかった。
夫が戦っているとき、それを助けることができるのは、妻以外に誰だというの?


