Lord of My Heart 〜呪われ伯爵の白い(はずだった)結婚〜


 大勢の、ひどく興奮した人々のあいだをすり抜けるのは、小柄なオリヴィアにとって簡単な仕事ではなかった。
 きらびやかなドレスや礼服にもまれつつ、なんとかぶつかってくる人々を手で避けつつ、オリヴィアは舞踏室から大広間、そして廊下や控えの間へと進んだ。

 しかし、あれだけ目立つ容姿にも関わらず、どこを探してもピートは見つからない。

 最後に彼を見たのはいつだったか、オリヴィアの記憶も曖昧だった。

 ぼうぼうに生えた白髪──白銀の髪といえと言われたっけ──は、舞踏会用の派手な衣装たちに囲まれても、簡単に見つけられるはず。
 そう思って、考えつく限りの場所を探してみたが、成果は芳しくなかった。老人はどこにもいない。

 きつめのドレスのせいもあって、オリヴィアの息はだんだんと弾んできた。

 しばらくすると幸運にも、人波から離れることができたので、オリヴィアは息を落ち着けるために大きなマントルピースのある一角で足を止めた。
 なんなのだろう。

(これじゃ、まるでわざと避けられてるみたい……)